目次
1.第5章 「わからないことだらけ 臨床から研究、そしてまた臨床へ」について
第5章「わからないことだらけ 臨床から研究、そしてまた臨床へ」は「P92-P142」の「全51ページ」で構成されている。
この章ではアルツハイマー病の科学的な基礎(といっても一般人には非常に専門的)を解説しており、神経変性の基本メカニズムと、リコード法の生物学的合理性について書かれている。
この章は難易度が高く、専門性が高いため、読み手は限られるかもしれない。(リコード法の具体的な治療方法等についてのみ知りたい人には、重要性は高くないかもしれない。)
ただ、「36個の穴が開いた屋根」の話等、リコード法を理解する上で重要となる事についても説明されている為、「頭の調子がよい時、余力があるとき、専門的な事に興味が湧いたとき等」に目を通すのが良いかもしれない。(なお、自分が参考になったと思える部分は備忘録に記載)
アルツハイマー病 真実と終焉 ”認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム
デール・ブレデセン (著), 白澤 卓二 (監修), 山口 茜 (翻訳),出版社:ソシム
2.第5章 「わからないことだらけ 臨床から研究、そしてまた臨床へ」備忘録
アルツハイマー病 36の異なる原因 P129
ブレデゼン博士の研究の結果、アルツハイマー病を引き起こす経路又は予防する経路に入るかどうかに関係する36の異なる原因が特定された。
36個よりも数個多いという事はあり得るが、それほどは多くないと思われる。
「アルツハイマー病36の要因」とされているものは以下のようである。(要確認)
1、APPβ切断の減少
2、α部位切断の増加
3、カスパーゼ3切断の減少
4、ネプリライシンの増加
5、ミクログリア貧食によるアミロイドベータ除去の増加
6、BDNF(脳由来神経栄養因子の増加)
7、ネトリン1の増加
8、ADNP(活性依存性神経保護タンパク質)の増加
9、VIP(血管作動性腸管ペプチド)の増加
10、PR2A(タンパク質ホスファターゼ2A)活性の増加
11、リン酸化タウの減少
12、インスリン感受性の増加
13、軸索原形質輸送の亢進
14、酸化ダメージの減少とROS(活性酸素種)産生の最適化
15、コリン作動性神経伝達の増強
16、シナプス破壊シグナル伝達の減少
17、エストラジオールの最適化
18、E2:P(エクストラジオール/プロゲステロン)比の最適化
19、遊離T3の最適化
20、THS(甲状腺刺激ホルモンの最適化)
21、シナプス発芽シグナル伝達の増加
22、レプチン感受性の増強
23、テストステロンの最適化
24、SHAE(デヒドロエピアンドロステロン)の最適化
25、インスリン分泌とシグナル伝達の最適化
26、炎症の減少
27、解毒の増強
28、シナプス成分の提供
29、テロメア長の伸長
30、幹細胞を介した脳修復の増強
31、カスパーゼ6切断の減少アミロイドβオリゴマール化の抑制
32、自食作用の増加
33、NGF(神経成長因子)の増加
34、ADNP(活性依存性神経保護タンパク質)の増加
35、ホモシステインの減少
36、食細胞指数の増加
36全ての原因に対処する必要はない P129
各原因の数や深刻度(穴の大きさ)は人それぞれ。アルツハイマー病の原因が多数あったとしても、36全ての穴を完全に塞ぐ事よりも、まずは大きな穴と十分な数の原因に対処して、バランスをアルツハイマー病抑制経路に傾ける事が大切。
(要するにバランスを「シナプス破壊 < シナプス保存」に改善させる事?)
但し、改善するまでできるだけ多く対処するのがベスト。
アルツハイマー病を治療する為の57の課題
アルツハイマー病を薬で治療するには、少なくとも以下に挙げた57個全ての作用を発揮できる薬でなくてならないという。
(アルツハイマー病36の要因に関係)
1) APPβ切断の減少
2) α部位切断の増加
3) カスパーゼ3切断の減少
4) ネプリライシンの増加
5) ミクログリア貧食によるアミロイドベータ除去の増加
6) BDNF(脳由来神経栄養因子の増加)
7) ネトリン1の増加
8) VIP(血管作動性腸管ペプチド)の増加
9) PR2A(タンパク質ホスファターゼ2A)活性の増加
10) リン酸化タウの減少
11) インスリン感受性の増加
12) 軸索原形質輸送の亢進
13) 酸化ダメージの減少とROS(活性酸素種)産生の最適化
14) コリン作動性神経伝達の増強
15) シナプス破壊シグナル伝達の減少
16) エストラジオールの最適化
17) E2:P(エクストラジオール/プロゲステロン)比の最適化
18) 遊離T3の最適化
19) TSH(甲状腺刺激ホルモンの最適化)
20) テストステロンの最適化
21) DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)の最適化
22) インスリン分泌とシグナル伝達の最適化
23)PPAR-γ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γの活性体)
24) 炎症の減少
25) 解毒の増強
26) シナプス発芽シグナル伝達の増加
27) レプチン感受性の増強
28)cAMP(環状アデノシン1リン酸)の増加
29) シナプス成分の提供
30)GABA(γアミノ酪酸)の増加
31)SirT1(サーチュイン1)の増加
32) テロメア長の伸長
33) 幹細胞を介した脳修復の増強
34)γ部位切断の減少
35) カスパーゼ6切断の減少
36)IDE(インスリン分解酵素)の増加
37)アミロイドβオリゴマール化の抑制
38) 自食作用の増加
39) NGF(神経成長因子)の増加
40) ADNP(活性依存性神経保護タンパク質)の増加
41) ホモシステインの減少
42) 食細胞指数の増加
43)レプチン感受性の増強
44)ミトコンドリア機能と発生の強化
45)シナプス発芽シグナル伝達の増加
46)LTP(長期増強)の亢進
47)プロゲステロンの最適化
48)遊離T4の最適化
49)プレグネノロンの最適化
50)コルチゾールの最適化
51)レゾルビンの最適化
52)血管新生の増進
53)グルタチオンの増加
54)金属すべての最適化
55)ビタミンDシグナル伝達の増加
56)NF-κB(核内因子κβ)の減少
57)グリア性瘢痕の減少
単剤療法でのアルツハイマー治療は必ず失敗する P134
アルツハイマー病の原因になりうる要因は少なくとも36にも及ぶため、アルツハイマー病を引き起こす多数のプロセスに対処しなければ、単剤療法は当然失敗する。
一方、リコード法のようなプログラムを薬剤候補と組み合わせることで、その候補薬は単一の使用ならば失敗した試験に成功する可能性がある。
36の要因のどの因子に対処すべきか特定する事が重要 P142
薬1錠でアルツハイマー病を治すことはできないが、治療プログラムを適切に組み合わせれば、全て手当てする事ができ、バランスを「シナプス保護 > シナプス破壊」に持っていく事で、認知機能を改善する事ができるようになる。
それには患者が36の要因のうち、どの因子を持つか特定し、食事、運動、睡眠、ストレスの軽減、サプリメント投与、その他生活スタイルの要因に基づいた治療計画を調整する。